手が離せないときや待ち時間などに、便利なのがYouTube(ユーチューブ)の絵本読み聞かせ動画。
子どもが大人しく動画を見てくれるので助かりますし、よくあるおもちゃ紹介やアニメと違って教育にも良さそうなのでわが家も時々使っています。
でもちょっと待ってください。
その動画、本当に子どもに見せても大丈夫な動画ですか?
実はYouTube(ユーチューブ)の多くの絵本読み聞かせ動画・小説朗読動画が権利侵害しています。
知らず知らずのうちに著作権に反した動画を応援してしまっている(視聴・いいね・チャンネル登録など)かもしれません。
お子さんのネットリテラシー、良識を育むためにも注意する必要がありますよ。
絵本・小説の中身を映す・朗読は著作権侵害
基本の基本ですが、絵本や小説といった出版物の中身を映すことや、文章を朗読することは著作権を侵害しています。
何気なく撮ったその写真、SNSに発信しても大丈夫な内容ですか?
えっ!?たしかに…。冷静に考えたらそうだよね!
よく漫画が問題になるよね。
でも、絵本や小説だって保護されるべき著作物だよ。
YouTubeだけではなく、TwitterやInstagram、TikTokといったSNSでも出版物の中身が映った投稿が日々増えています。
良いことを言っている、宣伝みたいなものだからいいよね?という軽い考えはNG。
著作者はもちろんですが、出版社から投稿の削除依頼や最悪訴えられることもあるので注意が必要です。
昔と違って個人が気軽に全世界に発信できるのは便利な反面、リスクとの距離も近くなっています。
SNSに投稿=発信者であることを意識して、私たち個人個人がネットリテラシーを高めることが求められています。
そして、そんな著作権問題に疎い現在の風潮に幼い頃から接することになる子どもたちに、正しい知識を教えてあげることが将来の子どもたちを守ることに繋がりますよ。
「漫画の中身を撮影していい。勝手に写真を使っていい。」など間違った認識が子どもに備わらないように、まず大人が良い見本になろう!!
例えば、人物の写真だと被写体の肖像権の侵害とカメラマンの著作権の侵害につながることも。(芸能人だから良い、綺麗な写真だからシェアして良いということはありません)
他人の作品を流用することは、その作品を作った方に失礼であり、ご自身にとってもとても危険な行為であることをしっかり認識しておきましょう。
表紙だけなら良い?
出版物の中身や内容を公開することがダメなのはご理解頂けたと思います。
では表紙だけなら良いのかというと、表紙だけであっても出版社の方針によるので確認が必要です。
例えば絵本の表紙の扱いについて、数社の方針はこちらのとおりです。
出版社 | 表紙の利用 |
童心社 | 著者名、画家名、出版社名を明記 |
福音館書店 | ・著者検索で確認要 ・書名、著者名(文、絵、訳など全て)、出版社名を明記 |
ブロンズ新社 | 書名、著者名(文、絵、訳など全て)、出版社名を明記 |
岩波書店 | 著訳編者名、絵本など絵を描かれた方が表記されている場合は画家名、書名、出版社名を明記 |
偕成社 | 書名・著者名・画家名・翻訳者名・出版社名を明記 |
ポプラ社 | 書名、著者名(文、絵、訳など)、出版社名を明記 |
小学館 | NG |
白泉社 | NG |
小学館や白泉社は表紙ですら使用NGと明記されています。(おそらく漫画の基準が採用されていて厳しめ)
その他の出版社については、著者名などの必要情報を近くに記載の上、一切加工をしないのであれば表紙を使うことができます。
引用と書いてあれば良い?
引用であれば中身を紹介してもよいかというと、それも程度によるので注意が必要です。
論文やレポートなどを作成する際に書籍や他論文の文章・図などを引用することがあると思います。
引用とは、自作した部分と引用した部分の割合が重要視されます。
あくまで自作のコンテンツを補う意味で「引用」は使える、と覚えると簡単ですよ。
つまり、引用と書いてあったとしても、絵本や小説を丸ごと朗読しているような動画は著作権を侵害しているということになります。
また、絵本や小説の読み聞かせにBGMや効果音を付けたり、オリジナルの絵をつけることで二次創作としている場合もあります。
これらは著作権者に許諾を得ていない場合は全編を読み聞かせの時点でアウトな上に、無断加工による著作者人格権の「同一性保持権」までも侵害している可能性がありますよ。
知らないで権利侵害しちゃってる人が多い…!
著作権フリーの絵本・小説ならSNSで楽しめる
SNSで紹介したり内容を話す、二次創作するなら著作権フリーの絵本・小説を使うのが大前提!
もしくは自身がつくった作品であれば、好きなように発信することができますよ。
青空文庫|著作権フリーの絵本・小説集約サイト
日本国内で著作権保護期間の満了した作品を中心に電子データ化・集約したサイトが「青空文庫」です。
青空文庫は、誰でもアクセスできる自由な電子本を図書館のようにインターネット上に集めることを目的として運営されています。
なんと1997年に始まったボランティア活動で、昔の文字・符号で書かれた文章を現代語訳してくれています。
- 芥川 龍之介
- 石川 啄木
- 海野 十三
- 江戸川 乱歩
- 谷崎 潤一郎
- 野村 胡堂(銭形平次シリーズ)
- 萩原 朔太郎
- 福沢 諭吉
- 宮沢 賢治
- 紫式部
- 森 鷗外
- 若草物語
- アリスはふしぎの国で
- ガリバー旅行記
- フランダースの犬
- 罪と罰
- レ・ミゼラブル
- グリム童話(赤ずきん、オオカミと七ひきの子ヤギ、ヘンゼルとグレーテルなど)
海外の作品も公開されているんだね!
原作者はもちろん、日本語訳している訳者の著作権が切れた作品です。
グリム童話をはじめ、馴染みのある作品も多いです!
\ 青空文庫で公開されている作品です /
著作権の切れた絵本・小説は「青空文庫」で探すのが手軽でおすすめですよ!
著作者・出版社に使用許諾を取る
こちらは正攻法!
著作者・出版社に作品使用を申し出て許可を取る方法もあります。
出版社のサイトに使用許諾書が掲載されているので、そこから申請を出してみるのも一案です。
引用:ポプラ社 著作物利用許可申請書
ですが、この上記の例を見て頂いてわかるとおり、商用利用での使用許可は難しいといったのが実情です。
各出版社のよくある質問(FAQ)に「ボランティアの読み聞かせならOK」「図書館の読み聞かせ会ならOK」など具体的な条件が提示されていることもあるので、事前に調べることをおすすめします。
そのほか、稀なケースですが、著作者さんと直接交渉することで商用利用できる場合や、個人で運営されている著作権フリーの作品サイトなどもありますよ。
出版されている絵本「うんこガエル」の読み聞かせ
こちらは作者さまと直接交渉する機会があり、絵本寄贈+YouTubeでの読み聞かせ動画公開をOKいただいた例です。
\ おもしろくて可愛い絵本♪ /
自作のオリジナル絵本・小説は自由に発信OK
無条件で自由に発信できるものは、自作した絵本・小説になります。
近年AI技術がめざましく発達しているため、文章や挿絵などをAIに作ってもらうなど、自分でオリジナル作品をつくるハードルがぐっと下がっています。
< AIの一例 >
- ChatGPT
- Midjourney
- Canva(AI画像生成機能)
無料で使えるAIチャット、AI画像生成ソフト・サイトを使えば、絵がうまくない・文章の表現幅に自信がないといった方でも手軽にオリジナル作品を作ることができます。
この機会に作品を作ってみるのも楽しいですよ!
絵本や小説の挿絵には、フリーのイラスト素材を使用することもできます。
こちらの記事では商用OK・事前登録不要のフリーイラスト素材サイトをまとめて紹介しています。
こちらは、実際にAI画像生成ソフト「Midjourney」を使って挿絵を作成した絵本作品になります。
作者のKAKUさんからOK頂き、YouTubeで読み聞かせ動画を公開させて頂いています。
\ AI「Midjourney」を使ったオリジナル絵本たち /
KAKUさんのAI絵本は、「Kindle Unlimited(キンドル アンリミテッド)」の読み放題対象になっています。
初めての方は無料で読むことができ、他にもおすすめの絵本があるのでこちらの記事もチェックしてみてくださいね!
著作権を守りながら絵本・小説を楽しもう!
作者の利益・権利を守ることで、新たな素晴らしい作品が生まれます。
良いこと・悪いことのボーダーラインがあやふやになっている今は、著作権について今一度よく考える良いタイミングだと思います。
一部ですが、著作権を守った真っ当な配信をしているSNSアカウントや、YouTuberも存在していますよ。
著作権を守りながら絵本や小説を楽しんでいきましょう!